
山口ひかり作品のお取り扱いが始まりました
0.3mmの薄い銅板を使い素手で造形し、金属製のキャンバスに無意識的に現れる線や点のドローイングを七宝で描き、金属作品を制作する山口ひかり。
お取り扱いがスタートしました。
「七宝」というと伝統的な技法で、装飾品では古くからブローチやネックレスなど宝石のように愛され、小さなものから美術館にも置かれているような大きな壺のようなものもイメージとして浮かぶかもしれない。
金属とガラスという異素材の融合で、うつくしい煌めきを放ち美しい技法です。

はじめて山口さんの作品を見たときハッと何かが心に宿る感覚がありました。
個人的に抱いていた七宝のイメージは簡単にくつがえされ、銅板という立体的なキャンバスの中でガラス質の煌めきが合わさり、そこには鮮やかで色彩豊かな色たちが自由に踊るように存在していたのでした。
用途など考える以前に、「そこにあるだけで、いるだけでいいんだ」というただならぬ存在感と、さらに不思議な安堵感も覚えました。
またO’DAYのコンセプトとして大切にしている「自由な感覚と感情」が形としてそこに現れた感覚があり、制作している「山口ひかり」ご本人が素直に気になりお話を伺いました。

まずは作品工程について。
0.3mmの銅板を素手で折り曲げたものを溶接して器型のキャンバスを作る。

刷毛を使って透明の糊で点や線を描き、糊の上に粉状の釉薬を振りかけていく。
本来、七宝の釉薬は、色の濁りを防ぐため不純物を取り除くが、山口さんの場合はその濁りを利用する。
また焼成時の酸化によって、釉薬が乗っていない銅に黒色の酸化膜が発生するが、これも利用する。

これらの偶発的な要素を取り入れながら模様や色味を決め、数回に分けて焼成していきます。
(壁掛けやプレートは0.8〜1.0mmの銅板を使用しており、素手では折り曲げられないので板金切断機や糸鋸を使用して板を切っています)

🔵工程のなかで1番好きな作業はどこですか?
作品焼成中。
釉薬が、焼成前と焼成後で質感も色も別人のように変化するところ。
焼成前(粉状、色の付いた砂みたいな感じ)
焼成後(ツヤツヤ、キラキラ、硝子)
🔵制作するうえで大切にしていることや作品表現への想いなどありますか?
子供の頃見るもの全てに感じた驚きと感動、あらゆるものへの直感力を失いたくないと思っています。私にとって手でものを作ることは、それらのことを思い出させてくれます。
あと、無理をしないこと。

🔵作品の色彩や形などのインスピレーションの根源のようなものはありますか?
作品に描かれた点や線、色に意味は込められていません。
自分の身体と心が求める動きで好きなように描くことは、子供の頃の直感力を思い出させてくれます。そこに大きな意味があるのです。
また、器という形をしたこの作品は、手で触り、その重さや質感を肌で感じることができます。初めて土や木に触れた時と同じように、この作品を感じてほしいと思います。

山口さんは北海道で生まれ育ち、幼少期から新体操選手として活躍し、身体表現をおこなってきました。
しかし美術大学で出会った金工、中でも七宝の色彩に魅了され、それ以降、ご自身の身体性と感性をもって金属作品を制作されています。
初めて触った金属は硬く扱いづらい素材だったが、0.3mmの薄い銅板を使うことで、ハンマーなどの道具を使うこと無く素手で造形することができるようになったそう。
そうしてできた金属製のキャンバスに無意識的に現れる線や点のドローイングを七宝で描くことは、子供の頃にした折り紙や画用紙に描く落書きと変わらない自由なものだった。

金属の重厚感と軽やかで柔らかなガラスの煌めき、最初に抱いた自由な感覚。それだけではない作品の魅力は、ご自身に会い、お話を伺い少し答え合わせができたように感じました。
子供の頃見るもの全てに感じた驚きと感動、あらゆるものへの直感力を失いたくないと話していた山口さん。
手に取れば、はじめての感触や匂いなど純粋で素直な気持ちが導かれるようで、用途ははっきりとはないが、この曖昧な感覚がとても心地良いのです。
そこにあるだけで、それでいい。
山口ひかり
0.3mmの薄い銅板を使い素手で造形し、金属製のキャンバスに無意識的に現れる線や点のドローイングを七宝で描いています。
これらはまるで、子供の頃にした折り紙や、画用紙に描く落書きと変わらない、自由なものでした。
子供の頃見るもの全てに感じた驚きと感動、あらゆるものへの直感力。私にとって手で物を作ることは、それらを思い出させてくれます。