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造形作家 山田珠子作品について◯アトリエを訪ねました

染色した布を土に埋め、微生物によって分解・腐食させた自然布を用いて主に立体作品を制作する造形作家 山田珠子。
先日アトリエを訪ねました。

染色された布は風でなびくとまるで海のよう。
ご自身で布を染め上げ干したあと、布を土に埋める作業に入ります。

分解、腐食の進み具合を確認しながら掘り起し、洗い、そのあと蝋型をもとに立体に仕上げていきます。
土や気候の環境で腐食の進みが早く、土に還ることもあるそう。

作品を手にとれば想像以上に軽く儚さも感じる一方で、緩やかな自然の時の流れにより生命力をも感じます。

まずは、作品説明にもある「染色した布を土に埋め、微生物により分解腐食させたその自然布」についてふれていきます。
お会いして最初に伺ったのは、このフレーズを聞いてから気になっていた [なぜ布を土に埋めようと思ったのか] ということ。

染織を学んでいた頃、アジアの産地巡りに行く機会があり、そこで染織物が出来上がるまでの経過をみた。
そこでは生き物(植物)から布が生まれ加工され、そこに緩やかで豊かなストーリーを感じたのだそう。
その布はその後どのように変化そして終わっていくのか、それは生活の中で不透明な部分だど気づいた。

実際に見て、始めは生き物だったのだから絶対に土に戻るはず。
そう思い実際に布を埋めてみたところ、土に還り、その循環を一周したことをみて、ある安心感がそこにあったのだそうです。

「生まれてきたものは必ず形を変えて、死とは別の物質に変化する。大きな緩やかな「循環」の中に植物も私たちもいる。
その安心感をまた得られるのではないかと思って現在のかたちになりました。」

そう語る彼女はとても聡明で、迷いなくご自身の考えを話されている姿が印象的でした。
初めて手にとったときに感じたあの生命力は、巡ってきた大らかな循環の中にいたからなのだと話を伺い納得しました。

また、作品の中には石が入っています。
少し揺らして石の位置を変えれば、作品の重心を変えることで様々な置き方を楽しめます。
その石はまるでお守りのようで、不思議と存在感/生命力のようなものがより増すように感じるのです。

◯制作する上で大切にしていることはありますか

布をしばらく土へ埋めてそのままにしておくと、空気や水、土がいつも新しい変化を加えてくれます。
蝋型は火に任せ、かたちがどこへ向かうか塩梅を見ています。
このように好奇心を持ちながら、自然を介してそのときどきを観察することを大事にしています。

◯使い手へのメッセージがありましたら教えてください。

生活の中で好きな場所に、好きな角度で眺めたり、物を入れたりして楽しんでいただきたいです。
暖かい日の光で形や色が少し変わることもあると思いますが、いきものを見るような気持ちで接していただければ嬉しいです。

ぜひみなさまの好きな角度で作品の「鎮座」をお楽しみください。

photography by Yuko Fukui

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